早春の飛騨路

行程  2011.3.11〜12
1日目  自宅大阪駅→<ワイドビューひだ>→高山駅高山市内
2日目  高山駅→<定期観光バス>→高山駅→<ワイドビューひだ>→名古屋駅→<新幹線>→自宅

1日目・2011.3.11(Fri)
飛騨そば-01

 大阪駅7時59分発の「ワイドビューひだ号」で一路、高山を目指す。途中、岐阜駅で名古屋からの列車と連結し、高山線へ入る。高山線沿いは、飛騨川の流れを眺めながらの旅で、とても快適だ。4時間あまりで高山に到着。高山そのものは、4度目だったが、今回の旅の一番の目的は、世界遺産「白川郷」「五箇山」を訪ねることにあった。訪問は翌日。高山市内はほとんど積雪もなく、晴れ間ものぞく好天だった。とりあえず、腹ごしらえということで、駅前にある蕎麦屋を何軒か

物色し、雰囲気のある一軒へ入る。「飛騨そば・小舟」―何とも趣きのある店内で、熱燗で一杯やりたくなるが、ひとまず蕎麦を頼む。頼んだお蕎麦は、「なめたけおろし蕎麦」。これがうまい。地物の大根おろしは、とても甘く、蕎麦つゆに混ぜると絶妙な味わいとなり、おかわりが欲しくなるほど。サイドメニューにあった、飛騨牛の串焼きも注文し、炭火で焼いた香ばしい肉を頬張る。レア具合が抜群で、最高!散策をやめて、ここで食を楽しもうかと思うが、お代

飛騨そば-02

を支払い町へ繰り出す。まず、飛騨国分寺を目指す。国分寺通り沿いにあり、両脇にあるアーケード商店街ではウィンドウショッピングが楽しめる。飛騨国分寺は、真言宗の古刹で鐘楼門や三重塔も素晴らしいが、樹齢1000年以上の大イチョウの木が何より目を惹く。幹の周りは10メートル以上、高さは40メートルほどというから、立派なものだ。秋の紅葉の時期は、圧巻だと思う。これから少しずつ、芽吹き青々とするのかと思い、どことなく春を感じる。と言いたかったのだが、何やら雲行きが怪しい。ちらほら雪も散り始め、ぐっと冷えてきた。先ほどの蕎麦で、身体の芯から温まっていたはずだが…。
 次に、伝統的建造物保存地区群に指定されている三町筋辺りを目指すが、突然の吹雪。強風と雪で視界は悪くなり、立ち往生してします。とりあえず、近くにあった漆器店に立ち寄り、様子をうかがう。時間は13時半。ホテルに戻るには早いが、この悪天候ならあきらめざるを得ない、と覚悟をしたが、10分ほどすると収まり一転、青空がのぞく。変な天気だと、この時は、それが何かの予兆であるなどと気付くはずもなく、ぶらぶらと散策を続ける。

飛騨国分寺と大イチョウ 高山三町筋の町並み 飛騨民芸さるぼぼ

 観光客向けに今風のお店に様変わりしているが、造り酒屋・食事処・民芸品店・お土産物店など、趣きのある建物が三町筋には建ち並んび、人通りも絶え間がない。我々も土蔵を改装したカフェに入ったり、五平餅を頬張ったり、食べ歩きも楽しんだ。雑貨屋が多く、裏通りなども楽しめる。ミニチュアの食品展示サンプルを扱っている文具屋があり、店内に入ると、少しグラっと揺れた。東北地方を中心とする大きな地震が発生した、その瞬間だった。お店の人が、「マグニチュードが8だとか、震度が7だ」とか言っていた。この時は、「また地震とは、たいへんだなぁ」程度の思いだった。
 ひととおり散策を終え、日の落ちる前にホテルに戻り、お風呂へ行く。露天風呂はちらほらと舞う雪を見ながら、なかなか情緒あふれる良い湯だった。そのあと、部屋に戻りテレビをつけ、想像以上の惨事が起きている事態を知り、絶句。指定の時間となり、夕食を済ませるが、そのあともテレビから目が離せず、寝ついたのは明け方のことだった。

 

2日目・2011.3.12(Sat)

 複雑な思いを抱えつつ、旅を続けることに…。
 高山駅前のバスターミナルから、濃飛バスが運行する定期観光バスで、世界遺産「五箇山菅沼集落」と「白川郷」を目指す。10時半、定刻どおり出発。高山駅前のバスターミナルは、外国人観光客もたくさんいて、国際色を感じた。わたしは、旅先で良く、定期観光バスを利用する。効率よく巡れることに加え、様々な説明(ガイド)があり、自分たちだけで巡っていては分からないこと、気付かないことを教えてくれるからだ。まず、われわれを乗せたバスは、2年ほど前に全線が開通した中部縦貫自動車道を進み、富山県南砺市にある「五箇山菅沼集落」へと向かった。この道路が出来るまでは、「庄川桜」で有名な国道156号(金名線)を何時間もかけて行かなければいけなかったが、今は、清見JCから20のトンネルを越え1時間足らずで行くことができる。

定期観光バス
五箇山菅沼集落全景

 11時半、五箇山菅沼集落到着。高山市内とはうって変わって、ものすごい積雪だった。静かな静かな集落には、9戸の合掌造りの家があり、今も生活を営まれている。合掌造りの特徴は、何と言っても萱ぶきの大屋根にある。豪雪の地に暮らす先人の知恵が詰め込まれた家で、様々な工夫が凝らされている。
 ここ五箇山菅沼集落は、国の史跡として指定を受けているため、様々な規制があり、たいへんだと言うが日本の財産的集落であり、維持継承していかなければいけないと思った。清らかな水が集落を流れ、生活用水として使われている。山に囲まれ、川が流れ、何とも素晴らしい景観に心洗われ、積年の生活を感じることができた。世界遺産の指定にも合点がいく。来てよかった、本当にそう思った。40分ほどの見学を終え、156号線を戻り、白川郷へ向かう。途中、ドライブイン「天守閣」で地元食材をふんだんに使った昼食をいただく。

菅沼集落の民家

 五箇山集落の特産品の一つ、「堅(かた)豆腐」をいただいた。これが美味しい。特産の朴葉のみそ焼きの中に入れ、少し焼いて食べても、また違った味わいを楽しむことができる。ついつい一杯いただきたくなる…。また、このドライブイン「天守閣」の展望台から、白川郷を一望することができる。通常、この展望台まで専用バスで往復400円必要で、多くのパンフレット等に掲載されている写真もここから撮影されているとか。ちなみに、そこで撮影したものが、下の写真の左側だ。

白川郷全景「天守閣より」 であい橋 白川郷合掌造り

 白川郷萩町合掌造り集落は、庄川に沿う形で集落が作られている。これも、庄川に沿って風が吹くため、風への抵抗を考え、まさに生活の知恵として、建て替えの際に向きをそろえて建て、今の形になったそうだ。長きにわたる自然との付き合い方を、人間が学び活かしてきた例といえる。
 合掌造り集落へは、上の写真真ん中の庄川にかかるつり橋「であい橋」を渡って行くことになる。もちろん、実際に生活を営んでおられる方もお住まいだが、五箇山集落より観光地として整っている感じを受けたが、田んぼや畑など、そこに広がる集落群は素晴らしかった。合掌造りの大屋根は、おおよそ正三角形を基本に作られているため、幾何学的で美しい。それゆえ、上の写真右側のように、とても美しい景観を生みだしてくれる。

水面に映る合掌造り

 遠くに望む山々もまた、集落の景観を際立たせる。白川郷は、これから春先、夏にかけ賑わいを増すという。3月のこの時期にしては、積雪が多いとのこと。店先に咲くチューリップの花が、ひと足早い春の訪れを告げていた。
 1時間余りの散策を終え、高山市内へと戻る。北アルプスの山々を望む飛騨の町は、自然に恵まれ、文化や伝統を大切に守る温かい町だと痛感した。秋の紅葉も格別だというから、また訪ねてみたい。まだまだ日本には、素敵な町や村があり、永年にわたり培ってきたものを伝えているのだと思う。改めて、その良さを感じた旅となった。

早春を告げる花

 

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